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「今日のパーティは、面白かったわね」 ネックレスを外しながらそう呟く。いつもなら、気位の高い方々はエリザベート嬢が近づくだけで口を閉ざし話を止めてしまう。周囲が、自分の事を成金の娘だと言って見下している事は言われなくても知っていた。 「外見は繕っていても、内情は火の車の癖に。下落して消えていくだけの者が、見苦しいわ」 今日の主役のマーティス嬢なんて、良い例だった。 「あそこまで虚栄心の高い彼女が、家の為に新興貴族と位だけの結婚をするなんて。驚きだったわね」 (それとも、私のものだと判っていたからなのかしら。小賢しい女。・・・負けたくないわ。最初から持っているモノの上で胡座をかいている人間なんかに) 背後からいきなり強い風が吹き付ける。 驚いて振り向くと、翻るカーテンの影、開いた窓の所に人影が立って居た。 杖を持ち、シルクハットを被り、タキシードの胸元に派手なリボンを飾り、奇異な化粧を施した者。 月を従えていて逆光になり表情は判らない筈なのに、口元に薄笑いを浮かべているのは見て取れる そして、あり得ない紫苑の瞳が輝いている。 「何者なの?誰か、来て!」 「無駄ですよ。皆さん、眠って頂きましたので。其れに貴方が私を呼んだのでしょう。力が欲しい、と」 「貴方、一体?・・・あぁ、そう、判ったわ。私知っているわ。魔術師なのね。あの方の」 「其の通りです。さて、どうしましょう。憎い男を殺しますか。其れとも女の方を殺しますか」 「代償は何かしら?無料奉仕なんてしないでしょう」 「賢くて結構なことです。そうですね。命ある物、とでもしておきましょうか」 「命ある物?植物でも動物でもかまわないの?其れとも人間の方がよろしいのかしら」 「目には、目を。歯には、歯を。・・・人の命には、人の命を代償に。まぁ、人生を変える位ならば、動植物でもかまいませんが」 「そう、願いは幾つ叶えて下さるの?」 「願いは、幾つでも叶えて差し上げましょう。払えるだけ、ね」 「命は誰の物でもかまわないのかしら」 「かまいませんよ?・・私には、貴方の其の割り切った考えが好ましい」 ふふっと、鮮やかに微笑んで満足そうに言う。 「ありがとう。ねぇ、成功しない確率は有るのかしら。危ない橋は渡りたくないのよ」 「思いは力、ですよ。エリザベート嬢。貴方の其の強い思いが私すら呼んだのです。貴方が叶えたいと強く願うなら失敗する事はないでしょう」 エリザベート嬢はくすりと笑い、蟲惑的な眼差しを魔術師に向ける。 「そう。ねぇ、貴方は天使の使いなの?其れとも悪魔の使いかしら?」 「さぁ、人によってどちらにでも。それでは、契約証をどうぞ」 手渡されたのは、一匹の純白の猫。困惑の表情を浮かべて見遣ると、 「これは口約束も契約であり言葉が貴方を縛る。ファウストとメフィストフェレスの様に。この子を可愛がってあげて下さい。私に会いたい時はこの子にお願いして下されば、参上致しますよ。では、また」 其の言葉だけ聞こえて、魔術師の姿は跡形もなかった。 |